2011年9月6日火曜日

SR需要増加の背景~ISO26000が生まれる前 5 環境

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今回は環境分野についてです。
環境については、CSRという概念が普及するより少し前から、世界レベルで話し合われるようになりました。レイ・チェルカーソンの「沈黙の春」(1962年に出版)、ローマクラブの「成長の限界」(1972年に発表)等から環境問題への意識が高まり始めています。

日本ではご存知の通り、四大公害病を始めとする公害問題から環境への意識が高まっています。
ちなみに、日本の企業でも1995年頃から環境報告書の作成が増えはじめ、2005年前後にCSRレポートに移行したケースが多いです。

■1972年 「国連人間環境会議」
ストックホルムで、環境をテーマに初めて地球規模の国際会議が開かれます。
この会議を機に国連環境計画(UNEP)が設立され、以後、多くの政策や運動の原点となります。

■1992年 国連地球環境サミット
リオデジャネイロで国連地球環境サミット(環境と開発に関する国際連合会議)開催
172カ国から4万人が参加したと言われる。 

■テーマ
地球温暖化やオゾン層破壊、自然破壊、野生生物の危機、廃棄物問題など

環境問題は、南北問題や人口増加、 労働問題、都市化等の社会経済問題と密接に関連しているという認識のもと、各国・各セクターが共通の場で議論し、環境保全と持続可能な開発に世界全体で取り組んでいくための方向性と具体的な手法を提示することを決めました。

この会議で、27項目からなる「リオ宣言」、「アジェンダ21を政府合意として採択し、気候変動枠組条約の署名を開始。「生物多様性条約」等、その後の取り組みに大きな影響を与える行動計画や国際条約が示されました。

この会議では、多くのNGOが参加し、環境NGOの存在が世界に認知されるようになります。
京都議定書やCOP10なんかも、この流れから来ているものです。
 
環境の節は、学生の時に学んでいたことを思い出して懐かしい感じがしますね。
この章だけ、他と違ってマニアックに書きそうなのでこの辺で失礼します(笑)



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2011年9月5日月曜日

SR需要増加の背景~ISO26000が生まれる前 4 消費者課題

次は消費者課題に関する動きです。

消費者運動はCSRを求める運動の原点の一つです。

始まりは1844年、イギリスで生活協同組合の元になるような組織がスタートしたことと言われています。アメリカの消費者連盟は1930年代に結成されています。

アメリカの故J.Fケネディ大統領が1962年『消費者の権利保護に関する大統領特別教書』でうたったことが、世界各国の消費者運動の祖になったといわれています。

■ケネディ大統領の消費者の4つの権利
1安全を求める権利
2知らされる権利
3選ぶ権利
4意見を聞いてもらう権利
5消費者教育を受ける権利(1975年にフォード大統領が追加)

これはそののちの権利とともに、ISO26000の消費者課題の原則に含まれています。

■国際消費者機構 消費者の8つの権利5つの責務
1982年に、国際的な消費者団体である国際消費者機構(CI:Consumers International)が、消費者の8つの権利5つの責務を提唱しています。

参考:消費者庁 ハンドブック消費者2007
http://www.consumer.go.jp/handbook2007/01/2007handbook-ch1-s2.html

■消費者保護ガイドライン
1985年にはこの分野で重要な国際ルール「消費者保護ガイドライン」が国連で採択されました。

このガイドラインでは、以下のような消費者の権利を示しています。

1 安全確保 2 経済的利益の保護 3 情報の提供と洗濯、
4 救済の実施、5 消費者教育の提供 6 消費者団体結成の自由の保障

1999年に改定され、「持続可能な消費」の考え方がガイドラインに追加されました。

また、日本では、1968年「消費者保護基本法」が制定されました。さらには、2004年6月に改正され、法律名も「消費者基本法」へと変わりました。

■調べてみよう

各企業の顧客サービスに対する取り組みを見る

各企業の製品責任に対する取り組みを見る




2011年9月2日金曜日

SR需要増加の背景~ISO26000が生まれる前 3 人権

ISO26000の生まれる背景について書いています。
今回は人権です。

■世界人権宣言
人権について重要な国際ルールといえば、「世界人権宣言」です。
(そんなに長くないのでリンクから読んでみてください)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/udhr/

1948年12月10日に第3回国連総会において採択されました。

宣言は今の日本人が読むと多くの人は、なんだ当たり前じゃないかと思われるかもしれませんが、当時の日本では多くの人にとって当たり前でなく、今でも多くの世界では当たり前となっていないことです。また、日本でもこれらが満たされない方々がいらっしゃるはずです。

この宣言は、国だけでなく「すべての人と社会の機関」が守るべきものと呼びかけています。

国際人権規約
その後、1966年の第21回国連総会において国際人権規約採択され、1976年に発効しました。(日本は1979年に批准)
2009年5月現在 署名国数69/締約国数160となっています。→こちらで確認できます。

社会権規約(経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約)自由権規約(市民的及び政治的権利に関する国際規約)の2種類が策定されています。

→全文はこちらで確認できます。


世界人権宣言と国際人権規約は、現在におよび、国際社会において人権のよりどころとなっています。

■ラギー・レポート
国連の人権委員会は経済社会理事会のもとにおかれていましたが、その後、2006年に人権理事会となり今日に至っています。ISO2600の人権部分で参考にされた「ラギー・レポート」は、2008年6月にこの理事会に提出されたものです。ラギーとは、国連事務総長の特別顧問で、ハーバード大学教授のジョン・ラギー氏が作ったことからきています。

ラギーレポートは、UNフレームワークとも呼ばれており、OECDのガイドラインでも人権について、ラギーレポートを参考にしています。



また、2011年5月25日、OECD閣僚理事会にてOECD多国籍企業行動指針の改訂が採択されました。これらは主にISO26000で大きく前進した人権部分に加え、サプライチェーンマネジメントの強化が主題となっています。

今後、人権分野ではISO26000と共にラギーレポートが重要なよりどころとなるでしょう。企業では特に人事部門の方がラギーレポートを理解しておく必要があります。

日本企業の人権に関するとりくみをご覧になるには こちら


■関連情報
ISO26000の7つの中核課題のうち、人権の項目に悩んでいます。すぐに取り組めて意味のある、よい活動事例はありませんか?

2011年9月1日木曜日

SR需要増加の背景~ISO26000が生まれる前 2

前回に続いて、次は産業革命以降、ステークホルダー別に背景をおってみましょう。


■産業の組織形成 (労働慣行分野の背景)
まずは、メインの企業という組織。
こちらは産業革命の中、イギリスで法人としての企業が生まれたことが始まりです。有限責任という考え方で企業が生まれ、今の株式会社に代表される会社につながります。

同時に商業の勃興に付随して、商売のルールが法としてできてきます。
これが今の企業法制に繋がってきます。

一方企業が生まれてくると労使問題が発生します。
1830年代に、イギリスで全国規模の労働組合が誕生します。
企業にとって重要なステークホルダーの一つとなり今日に至ります。

では、経営者と労働者が対立でなく、対話を通じてより良い企業と社会を形成しようという考えはいつ、どこから始まったのか?

それはイギリスの実業家ロバート・オーエンらによる国際組織設立を機に1919年、国際労働機構(ILO)が設立されたことから始まったと言えるでしょう。このILOが労使間統治にかんして、国際標準化の策定に影響を及ぼしていきます。

■社会的責任投資(=SRI Social Responsibility Investment またはSustainabilty Responsibility Investment)
用語の解説はこちらをご覧下さい。

第一次世界大戦の後の1928年に、プロテスタントのグループによってアメリカで設立された、パイオニアファンドが最初ではないかと言われています。パイオニアファンドは今で言う、ネガティブスクリーニングにあたる、アルコール、タバコの製造会社への投資を避けました。このネガティブスクリーニングは今では、ギャンブル、兵器製造を始め様々な業種等に広がっています。

日本では日興アセットマネジメント社が日興エコファンドを発売したのが初と言われています。アメリカの2007年のSRI市場総額は2兆7110億ドル(300兆円を超える)とも言われており、世界規模で拡大しています。日本はまだ2009年時点で純資産残高約5兆円と言われており、先進国の中でも進み具合が遅れています。

次は、人権分野です。


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